1825年の創業以来、木管楽器の進化を牽引してきたブランド、〈ビュッフェ・クランポン〉の類まれな歴史をご紹介します。
1783年生まれのフランス人楽器製作者、ドゥニ・ビュッフェ=オージェ(Denis Buffet-Auger, 1783–1841)が、パリ第2区のパッサージュ・デュ・グラン・セルフ 18番地(Passage du Grand-Cerf)に工房を構えます。13キーの優れたクラリネットを製作し、瞬く間に音楽界で知られる存在となります。
1836年、ドゥニの息子のジャン=ルイ・ビュッフェがゾエ・クランポンと結婚し、〈ビュッフェ・クランポン〉という名が誕生します。
この年より、〈ビュッフェ・クランポン〉製オーボエの製造が確認されています。
ドゥニの弟 ルイ=オーギュスト・ビュッフェは、クラリネット奏者イアサント・クローゼと協力し、テオバルト・ベームがフルートのために考案したシステムをクラリネットに応用します。「ベームシステム」はフランスをはじめ多くの国で普及しました。一方、ドイツとオーストリアでは「エーラーシステム」が主流となります。
ジャン=ルイ・ビュッフェは“全音階的クラリネット”と呼ばれる改良型で特許を取得します。叔父ルイ=オーギュスト・ビュッフェの特許に近い内容でした。
ジャン=ルイ・ビュッフェは叔父のルイ=オーギュスト、フェルディナン・トゥルニエと提携し、マント・ラ・ヴィルに工房を設立。〈ビュッフェ・クランポン商会〉を名乗ります。またこの年、〈ビュッフェ・クランポン〉によるベームシステムのクラリネットが誕生します。
ベルギーのアドルフ・サックスがサクソフォーンを発明してから20年後、〈ビュッフェ・クランポン〉初のサクソフォーンが誕生しました。サクソフォーン製作は、この年失効したアドルフ・サックスの特許をもとに、ピエール・グマスが工房に導入した蒸気機関によって進められました。
〈ビュッフェ・クランポン〉はパリ万国博覧会に、オーボエ属を含む42点の楽器を出品しました。製作技術と音響面で高い評価を受け、金メダルを受賞します。
ポール・イヴェットとエルネスト・シェーファーが〈ビュッフェ・クランポン商会〉を買収し、クラリネットとサクソフォーンを中心に製作を展開します。〈イヴェット&シェーファー〉は古典作品の楽譜の出版も手がけていました。
〈ビュッフェ・クランポン〉はパリ万国博覧会で数々の受賞を重ねます。
米国への輸出を開始します。
高級サクソフォーン“アポジェ”を発表します。革新的なキーメカニズムを採用し、他社も追随します。
1921年に見習い職人として入社した音響学者ロベール・カレは、1955年に“R13”を開発。米国で絶大な人気を誇るモデルとなります。同年、サクソフォーン“ダイナクション”を製作します。1957年には“スーパーダイナクション”、1973年には“Sシリーズ”へと発展します。〈イヴェット&シェーファー〉の名で学生向けのフランス製・イタリア製サクソフォーンを展開し、ヨーロッパの教育市場で主要供給者となります。
日本では作曲家の保良徹(Hora Toru, 1932–2020)が1967年に〈ビュッフェ・クランポン・ジャパン〉を設立。ジュリアード音楽院で学んだ彼は、1964年に〈ビュッフェ・クランポン〉に入社し、日本市場における管楽器の普及と、販売店への高度な教育研修に尽力しました。2011年、社名を株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパンに改称しました。
〈ビュッフェ・クランポン〉は、1760年に設立されたロンドンの有名なブージー&ホークスグループの一員となりました。工房は次第に近代化し、ブランド独自の伝統的な職人技術と最新技術が融合することで、ブランドは更なるイノベーションや品質向上を実現しました。
〈ビュッフェ・クランポン〉は、1760年に設立されたロンドンの有名なブージー&ホークスグループの一員となります。工房は次第に近代化し、ブランド独自の伝統的な職人技術と最新技術が融合することで、ブランドは更なるイノベーションや品質向上を実現させます。
ルネ・ルシュー(技術者)とジャン=ルイ・カペザリ(当時フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団首席奏者)がオーボエ “プレスティージュ”を開発しました。オーボエ “プレスティージュ”はグレナディラ製に続いてグリーンライン製が展開され、これらは “ヴィルトーズ”(2017)、“レジェンド”(2021)、“プロディージュ”(2016)に続いていきます。
〈ビュッフェ・クランポン〉は、“グリーンライン”を発表します。これは世界初の再構成されたグラナディラ(Dalbergia melanoxylon)を用いた木質系複合素材による新しいシリーズです。“グリーンライン”は管楽器の世界における革命であり、クラリネットやオーボエの製作に不可欠な重要資源を守ることを可能にします。この素材はピエール・ロランスによって発明され、国際商標として正式に登録されました。“グリーンライン”は、伝統の尊重と革新を兼ね備え、卓越した安定性、割れに対する強さ、そして常に変わらぬ音色を提供します。
ミシェル・アリニョン監修で、R13系譜に連なる最上位機種のクラリネット“トスカ”が著名奏者の協力のもとに完成しました。
〈ビュッフェ・クランポン〉は卓越した職人技と製造技術が評価され、フランス政府より「フランス国宝企業」(無形文化財企業(EPV))に認定されました。
〈ビュッフェ・クランポン〉は、ラ・クチュール・ブセ(フランス・ウール県)にある歴史あるクラリネット製造工場の買収により生産能力を拡大し、高品質なスチューデントクラリネット“E11 F”(FはFranceの略)の製造を開始しました。
クラリネット最上位機種“ディヴィンヌ”が登場します。RCタイプの広い内径を持ち、“トスカ”と“グリーンライン”技術を継承します。
アルトサクソフォーン“センゾ”は、〈ビュッフェ・クランポン〉のサクソフォーン復活の第一歩となる機種で、プロフェッショナルモデルの基準となることを目的に開発されました。“センゾ”は、フランスの管楽器メーカーの専門知識と最先端技術の融合を忠実に反映し、現代の演奏家の最も高い要求に応えます。
中国・北京に150㎡のショールームを開設しました。上海近郊・嘉善に新工場(BCMMI)を建設し、年間5万本のスチューデントモデルを生産します。
クラリネット“BCXXI”が登場しました。革新的な構造でB♭クラリネットの常識を刷新し、新世紀の音響パラダイムを切り拓きます。
マント=ラ=ヴィル工房に「技術伝承学校(エコール・デ・サヴォワール=フェール)」を設立します。クラリネット製作の技能継承を推進します。
2024年。〈ビュッフェ・クランポン〉は「グランプリ BFMビジネス ETI部門・メイド・イン・フランス賞」を受賞します。
〈ビュッフェ・クランポン〉は創立200周年を迎えます。